「認知行動療法」ってなんだろう?
ここ数年、「うつ病治療に効果がある」というので「認知行動療法」がテレビや雑誌でしばしばとりあげられるようになりました。
「認知行動療法」とは何でしょうか?
それは、「行動療法」と「認知療法」が組み合わさったものなのです。(※定義)
「行動療法」とは、新しい行動を学習して、いま問題となっている状況を改善したり、不適応な行動を起こらないようにしたりする方法のことなのです。ここでいう「学習」とは、経験によって比較的永続的な行動の変化がもたらされることです。
そして、その方法は目的に応じて様々な方法があります。
たとえば
・系統的脱感作法
・嫌悪療法
・暴露法(エクスポージャ法)
・モデリング法
・ソーシャル・スキル・トレーニング
などなど
さて、それでは「認知療法」とは?
ある外からの出来事が感情や体の反応を直接引き起こしているのではなく、そうした出来事をどのように受け止めているか(認知)で体の反応や感情、行動が異なってきます。だから、その受け止め方(認知)を見直していきましょうね。という治療法です。
次の章で、もう少し詳しくご説明します。
「認知療法」ってなんだろう?
私たちは、現実をそのまま客観的に見ているわけではありませんね。
私たちは、それぞれの受け取り方や考え方の影響を受けながら、自分の周りの世界を作りあげて生活しています。外の景色も、初めて訪れたときと、次に訪れたときでは見え方が異なりますよね。
次の電車がくるのが7分後としたとき、「もうすぐ電車がくるぞ」と思う人もいるし、「あと7分もこないのか」と思う人もいますよね。
このように受け取り方や考え方である「認知」には個人差があり、この「認知」の方向性に偏りが大きかったり歪みが大きかったりすると、現実の出来事を受け止めるときにストレスを発生させる原因となる場合があるのです。そして、この原因となっている「認知」に働きかけて、心理的なストレスを軽くしていきましょうね、という心理療法なのです。
「自動思考」と「スキーマ」
「認知の方向性に偏りが大きかったりゆがみが大きかったり」とはどういうことでしょうか。
そこで「自動思考」と「スキーマ」という概念を使ってご説明します。
「自動思考」とは、瞬間的に思い浮かんでくるイメージのことで、私たちが現実をどのように見ているかがそこに現れます。たとえば、雨に濡れたタイルの道で「あっ、滑っちゃうかも」と思うのは「自動思考」です。誰にでもある瞬間的に浮かぶ考えですね。
不安が強いときには、「何か危険なことが起こるかもしれない」とか「こんなこと言ったら、あの人に嫌われるかもしれない」などの考えに支配されるようになったりします。これも「自動思考」です。
でも、この考えは、自分のこころの中に起こったことであって、必ずしも事実ではありませんね。そういった「自動思考」を、現実にそった柔軟な考え方に変えていくことができれば、不安もやわらぎ、ストレスも少なくなっていきます。
そして、「スキーマ」というのは、この「自動思考」のもととなっている考え方のクセなのです。たとえば、「完璧でなければならない」とか「正しいか間違っているかどちらかだ」とかそういった考え方になりやすい場合がありますね。そのような考え方の傾向のことを「スキーマ」といいます。
いろいろな場面でのストレスをなくしていくためには、「自動思考」だけでなく、そのもととなっている「スキーマ」に気づき、変えていく必要があるのです。
1.根拠のない決めつけ | 証拠が少ないままに、思いつきを信じ込むこと |
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2.白黒思考 | あいまいな状況に耐えられず、白か黒かの極端な考え方で割り切る |
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3.部分的焦点づけ | 自分が着目していることだけに目を向け、結論づける |
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4.過大評価・過小評価 | 関心事は拡大してとらえ、予想に合わないときは小さくしてとらえる |
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5.べき思考価 | 「~すべき」で自分の行動を自分で制限してしまう |
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6.極端な一般化 | 少数の事実をとりあげ、すべて同様の結果なると結論づける |
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7.自己関連づけ | 悪いことは、自分のせいだと責める |
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8.情緒的な理由づけ | 感情で現実を判断する |
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9.自分で実現してしまう予言 | |
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認知行動療法の定義
クライエントは、行動や情動の問題だけでなく、考え方や価値観、イメージなど、さまざまな認知的な問題を抱えている。行動や情動の問題に加え、認知的な問題をも治療の標的とし、治療アプローチとしてこれまで実証的にその効果が確認されている行動的技法と認知的技法を効果的に組み合わせて用いることによって問題の改善を図ろうとする治療的アプローチを総称して、認知行動療法という。
坂野雄二 「認知行動療法」『心理学辞典」 有斐閣 (1999)