うつ病とは
最近では、テレビや雑誌、そして職場のなかでも「うつ病」という言葉がよくきかれるようになってきました。
確かに、うつ病は、私たちからそれほど縁の遠い病気ではなく、普通の人の心理とつながっている気分が障害された状態ですから、誰にでもかかる可能性があるといえます。しかし、誰でもかかる可能性がある反面、「こころのかぜ」と呼ばれるほどには軽く考えてはいけない病気なのです。
うつ病になってしまったら、数か月の休職に至ってしまうことも多いですし、また、こころならずも「死にたい」などと考えてしまったり(希死年慮)、自殺を企ててしまうこともあります。時間はかかるかもしれませんが、治る病気ですから、心身の不調を感じたら早めに相談を受けることが大切です。
「自分がうつ病になるわけがない」と思っている方も多いでしょう。しかし、うつ病の生涯有病率は、ほぼ15%。この値は、近年増加傾向にあり、その意味では非常にありふれた病気ということができます(岩波,2007)。「自分は精神的に弱いのか?」とか「自分がなぜなってしまったのか?」と自分を追い込んだりしないで、「早めに対処しておこう」「誰でもかかる病気だ、必ず治る」と思いましょう。
そして「もしかしたら」と思ったら、早めに専門機関にご相談ください。
うつ病かなと思ったら
「体がだるい」「疲れがなかなか取れない」「食欲がない」「朝早く目が覚めて眠れない」と体の不調を感じたり、「何をしても楽しくない」「興味がわかない」「集中できない」「イライラする」などの心理的な苦痛を感じているような状態を『抑うつ状態』といいます。
他の病気から『抑うつ状態』になっている場合もありますし、まだうつ病に至っていない、その前の状態なのかもしれません。
以下のようなことはあてはまるでしょうか?
- 憂うつな落ち込んだ日々が2週間以上続いている。
- いままで楽しかったことが楽しくなくなる。
- 不眠や食欲不振が、疲労感が2週間以上毎日続いている。
- 一日のうちでとくに朝が落ち込んでいる。朝起きられない。
- 仕事や家事が手につかず、日常生活に支障をきたしている。
このような状態がつづいているときは、「うつ病」になってしまった可能性があります。 また、上記にはあてはまらないけれど
- 食欲不振または過食
- 睡眠不足または過眠
- 体が鉛のように重い
- 人に批判や拒絶されたときひどく落ち込んでしまう
などの症状が、軽度ではあるけれど長期にわたって続いている場合には、「非定型のうつ病」という可能性もあります。 その他にも、秋から冬にかけて抑うつ的になる季節性感情障害や、躁病を伴うものもあります。
『抑うつ状態』かな と思ったら、それが続かないように早めに対処していきましょう。
抗うつ薬を飲むということ
「うつ病を発症するきっかけには、(1)脳に関わる遺伝子の要因 (2)性格傾向(几帳面、仕事熱心、執着的など)の他に、(3)過労、職場の人間関係、経済的問題、近親者の死などがあると考えられています。しかし、その脳内のメカニズムはまだ十分に明らかになってはいません。
周囲がしばしば勘違いして「気合いでなんとかしろ!」と言ってしまうことがあります。しかし「気合」でなんとかできる病気ではありせん。薬が必要な状態や期間は、やはりあると思います。信頼できるお医者さんをみつけて、診断をしてもらい、正しい処方で、副作用をきちんと説明してもらって、症状を改善させていきましょう。
また、飲んですぐに効果が表れるような薬ではありません。通常は効果を感じ始めるまで、最低10日~2週間かかります。その間、便秘や眠気、口渇などの副作用を感じるかもしれません。不安を感じたらすぐに医師に相談をして、安心・納得して薬を使っていけるようになるといいですね。
うつ病だと診断されたら
定型うつ病の方は、真面目で責任感が強く、与えられた仕事を完ぺきにこなそうと頑張りすぎたために、うつ病にかかってしまった方が多いようです。 まずは、十分な休養が必要です。 そんなに頑張ってこられた方だから、きっと「休暇をとる」「休職する」ということが、とてもできることではないと考えてしまうかもしれません。でも、今のあなたには休養が必要なのです。
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日常の人間関係や今の自分の環境にストレスや不安を感じたり、失恋したりなど、こころのストレスを感じてきた方が多いのではないでしょうか。体のだるいとき、重いときは休養が必要ですが、可能なときは仕事に向かい、規則正しい生活を送ることが大切です。
☆記事追加☆ 「新型うつ病」について>> 非定型うつ病とは>> もご参照ください。
参考文献:
- うつ病―まだ語られていない真実 (ちくま新書) 岩波 明
- 精神医学特論 (放送大学大学院教材) 石丸 昌彦
- 現代の抑うつ(こころの科学セレクション) 風祭 元
- 専門医がやさしく教えるうつ病 水島広子